アンバランスな想い
「重いよ~
って言ってごらん」

にこにこと笑っている瑛ちゃんが言った

「平気ですから」

「スーちゃん
こういうときは
重たくなくても

『重くて、もう死んじゃう~』
…って言わなくちゃいけいのよ」

何それ?
何で
瑛ちゃんに
甘い声を出さなくちゃいけないの?

「可愛い女の子の礼儀なんだから」

礼儀ね~
そうやって
お姉ちゃんは男性に優しくしてもらうわけね

「練習、練習
俺に言ってごらん?」

瑛ちゃんがすごく楽しそうだ

「谷山先生
私、先に数学研究室に行ってますね」

お姉ちゃんと瑛ちゃんにお辞儀をすると
私は廊下を歩き始めた

絶対に
瑛ちゃんには言わない

お礼をしろって
請求してくるに決まってる

隙あれば
襲おうとする瑛ちゃんになんか

頼らないんだから

「我が愛しの姫は
どうして
そう頑張り屋なのか

俺っていうのがあるんだから
利用すればいいのに」

廊下に出て駆け寄ってきた瑛ちゃんが
すっと
私の手にあった荷物を奪った

自然で鮮やかに
私の手から瑛ちゃんの手へと
大量のノートが移動していった

「平気だって言っているのに!
私、買物で重たい荷物も持ってるんだよ

これくらい運べるし」

「で?」

「はい?」
私は首を傾げた

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