ヴァンパイア†KISS
そう感じた途端、体の上に乗っている重みに気づいた。

できる限り力いっぱい頭を上げると、別荘の庭園のベンチに横たえられた自分の上に、銀髪の頭の男がぴったりと乗り上げ、わたしの首筋に彼の唇を押し付けていた。

……そういう状況が、やっと把握できた。

その瞬間、反射的に悲鳴を上げようと口を開けかけたわたしに。

男はすぐさま顔を上げ、月の光の中でその顔を露にすると、

バイオレットの瞳で冷たい視線を落とした。

「い……」

なぜか、悲鳴が喉の奥につかえて空しく飲み込まれていった。

銀髪の流れるような髪が、男の首筋から零れるように落ちてくる。

男の瞳には銀色のマスクがかけられていたが、美しい曲線を描く顎と、高く通った鼻筋、キスするためにそこにあるかのような艶っぽい唇が、甘くわたしを誘う。

ゴクリと生唾を飲み込んだ自分に気づいた。

「人間の血など、けして欲しいなどとは思わなかったが……」

男はそう言うと、ビクンと身震いし、甘美な唇から白く光る牙と、赤い果実のように甘い匂いを垂らす舌を零れさせた。

「……ハ…ァ…」

満月を背に、男は額から一すじの汗をたらりと零すと、

「人間は…キスが好きらしいな…」

そのセリフが聴こえた瞬間にはすでに……。



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