ヴァンパイア†KISS
銀髪の美女の腰に手を添え彼女をエスコートするように歩いてくる男性。

艶やかな黒髪に、バイオレットの誘惑するような瞳。

長いまつ毛が物憂げにかかり、その麗しい表情は女性たちのため息を誘った。

その美しい輪郭をもった男性は、優雅な足取りで歩いてくると、

――まるでキスするためにそこにあるかのような唇で、笑った。

「皆様、デュオとルシア、二人とも25歳です。彼らのこれからの活躍をどうか応援してください」

ワーっという歓声が巻き起こる中。

わたしは、思いがけず目の前に現れたデュオのバイオレットの瞳に吸い込まれたまま、動けなかった。

会場は笑顔や歓声に包まれて、わたしだけが笑っていなかった。

かずちゃんがずっとつないでくれている手を振りほどきたい。

振りほどいてデュオの胸に飛び込めたら………!

10日ぶりに再会できた喜びと、複雑に絡み合ってしまったわたしとデュオの赤い糸を感じながら。

わたしは運命をたぐり寄せる勇気を失い、かずちゃんの手を振りほどくことができなかった。

…………デュオ!!

こんな再会、望んでなかった………!!!

デュオの後ろで勝ち誇ったように微笑むルシアを横目に。

わたしはただ、嵐のように巻き起こる歓声を聞いていた。








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