ヴァンパイア†KISS
グンっと伸び上がる肢体が瞳に飛び込んでくると、

わたしはその全てに釘付けになった。

軽やかで切れのいいターンが差し込む月明かりに反射する。

デュオは、その美しい黒髪を乱しながら、

情熱的な微笑みを浮かべると、

全ての愛をもぎとるように、ステップを踏んだ。

そして、

彼は片手で女性を抱くしぐさをし、

月を仰がせるように、彼女の体を反らせた。

ほんとうにそこに女性がいるかのように、

デュオは官能的に腕の中を見つめると、最後に、

ダンっと軽やかな靴音を鳴らしながら、月を見上げて微笑んだ。


…………トクン……!

胸がきゅんと高鳴った。


たった一人の、タンゴ。


デュオのタンゴはヴァンパイアの愛と官能、そして、

哀愁を表現するようで。

キィ…とドアが開くのにも気付かず、わたしは夢中で月を見上げて立ち尽くす彼を見つめていた。

「カレン……」

こちらを振り向いたデュオは、月明かりに反射して、

………とても、ミステリアスだった。









< 231 / 411 >

この作品をシェア

pagetop