ヴァンパイア†KISS

シエルの想い

翌日。

半月にほど近い月が神秘的に夜空の城を照らしはじめたその時刻。

わたしとデュオとブルース。

そして100年以上前からウルフに忠誠を誓い続けるルドルフという野生的な青の瞳をもった青年がヴァンパイアの城を眺め立ち尽くしていた。

「ルドルフ、オズワルドの力は強大だ。それでも、来てくれるか?」

デュオの問いかけに、ルドルフは瞳を隠すように長く垂れ下がる銀髪の下で青の瞳を光らせ、跪いた。

「100年前、私たちはウルフ様を助けることができませんでした。その時の仲間は人間との闘いによって命を失いましたが、私は彼らに誓ったのです。最期のその時まで、ウルフ様をお護りすると」

「ルドルフ、その言葉、ウルフが聞いたら喜ぶだろう」

二人の様子を見ていたブルースは突然デュオに跪くと、嬉々とした表情でデュオを見上げた。

「あ、あのぉ、デュオ様。僕にもその質問を…!」

デュオはブルースに一瞥をくれると、冷たく眉を吊り上げ言い放った。

「その必要はない。お前は私と来ることが決まっている」

シュンとした表情で肩を落とすブルース。

「そ、そんなぁ、デュオ様!僕もデュオ様を最期までお護りするとかっこよく誓いたかったのに!」

デュオはブルースに背を向け、

「ああ。だからお前の気持ちはわかっている。私が一番信頼しているのはお前だ。……少し、頼りないがな」

「…デュ、デュオ様!!」

ブルースがデュオの後ろで水を得た魚のように飛び跳ねる。

頼りないって言葉は耳に入らなかったようだ。

「それにしても、シエル……遅いな」

わたしは城を見上げながらつぶやいた。





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