ヴァンパイア†KISS
「知らない!具合が悪かったから覚えてないの!」

サラの真似をするようにわたしも声を張り上げて答えた。

「まぁ、仮面舞踏会だしねぇ。素性がわからないっていうのが醍醐味なわけだけど。でも、具合が悪くて倒れている女に手を出すなんて、悪い男よねぇ」

サラはしれっと悪びれもせず一人感心するようにうなづいた。

サラの男女の仲に対するクールな対応には、前から感心していたわたしもここでちょっと興味が沸き質問してみることにした。

「ねぇ、サラってファーストキスはいつ?どんな感じだった?」

サラはわたしを振り返ると何を今更ってな顔で右手の指を3本立てる。

「3つの時よ。ベッドメイクをしてくれるお手伝いにちょっといい男がいたのよねぇ。駄々こねて添い寝してもらってそのまま無理やりキスしたの。思えばわたしのキスの変遷はそこから始まったのよね。その後も毎年のようにいい男を見つけては、キスを繰り返してたわ。さすがに7歳の時にはキスにも飽きちゃって、それからは寄って来る男の品定めよ。まずはキスをさせて快感を味わえるか見定める。わたしはキスをして初めてその男に恋をしたの」

「そ、そうですか…」

一気にまくしたてたサラの尋常ではない呼吸法が気になりながら、味噌ラーメンのように濃くて油っぽいサラのキスの変遷をたっぷりと味わったわたしは、また頭痛がひどくなったような気がして目を伏せた。


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