ヴァンパイア†KISS
ザバーン!!

という水面を激しく打ち破る音がしてわたしは意識を回復した。

「……う、ごほっ!」

いきなり空気が肺に入り込んできた反動で咳き込む。

わたしはプールサイドに座り込んで息を整えようと必死に水を吐きながら胸を押さえた。

「ふ…う…」

やっと落ち着いた息で一つ深呼吸をする。

その瞬間。

月明かりの中、わたしのすぐ脇、プールの中にバイオレットの瞳を見出し、ゾクリとわたしの体が震えた。

その人物はわたしの足元のタイル張りの床に片腕を置き、もう一つの片腕で水が滴る黒の髪をかきあげる。

うなじの部分が少し長めの流れるような黒髪。

美しい曲線を描く顎に、高く通った鼻筋。

そして………

―――まるでキスをするためにそこにあるかのような唇。

男は背が高く、プール脇に座っているわたしとほぼ同じ高さでプールの中からわたしを見つめる。

髪の色は違うけど、間違いない!

この人が、あの夜のヴァンパイア――!!

手を伸ばせばすぐに触れられるその距離から。

男は冷たく光るバイオレットの片目を細めると、赤い果実を突き出し自らの唇を悩ましげに舐める。

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