ヴァンパイア†KISS
優雅で煌びやかな音楽。

ダンスホールをくるくると廻る色とりどりのドレスやタキシード。

地下通路をくぐったその先に、そんな幸福に満ちた優美なひとときが目の前に広がる。

わたしは純白のドレスを身にまとい、夢の世界に来たかのような興奮で胸をいっぱいにしながらそのホールの門をくぐった。

「なんてこと……人間の子供だわ…!」

わたしの姿を見てざわつく人々。

『に…んげん…?』

わたしは自分の姿を観察するように見回す。

金糸の巻き毛に、透き通るように白い肌。

これは……わたし…?

10歳ほどに見える背丈の自分に驚く。

『君、名前は?』

声をかけられて顔を上げると。

20代後半ほどに見える銀髪の美しい髪を腰まで垂らしたタキシードの男性が立っていた。

『……エマ』

『そうか。迷い込んでしまったんだね』

男性は優しく微笑むと、わたしの手をそっと握りホールの中央へとエスコートする。




………ああ。

これはエマの意識だ。

このタキシードの男性は、ウルフ。

エマがわたしに語りかけてくるように、わたしはエマの意識に触れていた。


―――エマとウルフは、こうして出会った――。


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