クールな弁護士の一途な熱情



「私も一本買いたいなー、どれにしよう」

「どうせ入江チーフのことだからまた赤色ですよね。いつも赤色ですし」



そう言いながら、彼女は今日も赤色の口紅が塗られた私の唇を見て笑う。



顔を彩るベージュ系のアイシャドウと、肌をマットに仕上げるオークルカラーのファンデーション。

その中でひと際目立つ赤い口紅は、女性らしく、そして自分の顔立ちをよりはっきりと見せてくれる。



このメイクに茶髪の巻き髪、黒のパンツと高めのヒール、と気が強い女といった見た目になってしまうのが少し気になるけれど。



「お、新作の色見本あがってきたんだな」



するとそこに、低い声が響く。

振り向くと部屋の入り口からこちらを見るのは、白いワイシャツと黒のスラックスに身を包んだ男性。

企画課の課長である私の上司、上原さんだ。



背はあまり高くないけれど、無造作な黒髪と右目の泣きぼくろが色っぽい。

爽やかで人当たりも良く、部下からの信頼も厚い。もちろん仕事もできる。

おまけに33歳独身ということもあり、女性社員たちからの人気も高い人だ。


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