トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
もしかして、あたしに挨拶してくれた?

ハッとして慌てて顔を持ち上げて

「おはよう!」

と笑顔で返す。

「わたし、葛生薫子(くずうかおるこ)。同じクラスになれて嬉しい。よろしくね」

前の席の女の子が優しい笑みを浮かべながら小さく頭を下げた。

「あっ、あたしは杉原梨沙(すぎはらりさ)。葛生さん、こちらこそよろしくね!」

微笑み返すと、葛生さんは席に腰かけた。

彼女からふわっと甘い香りがする。

確か去年は隣のクラスだった子だ。

魅力的な子だなぁ……。

可愛いか美人かでいうと美人の部類に入るであろう彼女。

でも、笑った顔は少しだけ幼くなる。

多分学年でも1、2を争うぐらいの美貌の彼女。

でも、不思議なことに彼女はいつもひとりでいる。

移動教室や体育で廊下をすれ違う時、彼女はいつも一人だった。

教室にいる時はいつも席に座り本を読んでいる。

大人しくてとっつきにくい子なのかと思っていたけれど、自分から「おはよう」と笑顔で挨拶もしてくれたしなんだか少し印象が変わった。

ダメダメ。第一印象や直感で相手のことを決めつけるのはよくない。

自分自身をいましめる。そういうところ、あたしの悪い癖だ。

同じクラスで席も前後だし、この機会に仲良くなれたらいいな。

そういえば葛生さんとは1年生の時から廊下や移動教室の時などにやたらと目が合った。

彼女はそのたびにまるで昔からの友達みたいにあたしににっこりと微笑んでくれた。

人当たりは良いのに友達ができないなんて不思議だ。

この時のあたしはあまり深く考えることはなかった。
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