【完】俺の隣にいてほしい。
そこでさりげなく氷上くんのことを聞かれ、少しドキッとした私。


そういえば、そうだった。昨日は氷上くんと一緒にいるところを椿くんに見られたんだっけ。


別に氷上くんはただの友達だけど、優里亜ちゃんたちに前〝浮気〟みたいなことを言われてしまったものだから、なんだかわけもなく気まずかったのを覚えてる。


椿くんに氷上くんのことを誤解されても困るし……。


「あ、うん。吹奏楽部で一緒だった友達で、同じ楽器を担当してたんだ」


「へぇ。楽器って、なにやってたの?」


「アルトサックスだよ」


「マジで。かっけぇじゃん。じゃあやっぱ、仲いいんだな」


そんなふうに言われたら、戸惑ってしまう。


どうしよう。あまり仲がいいと思われても困っちゃうな。


「な、仲がいいってほどでもないけど、氷上くんは今のところ、塾で唯一話せる相手というか……」


「ふーん」


「帰りも、方向が同じだから一緒に帰ってて」


うぅ、なんか言い訳みたいになってきたよ。変なの。


「そっか。頼りになる奴がいて良かったじゃん」


「え、あ、いや……」



< 163 / 311 >

この作品をシェア

pagetop