【完】俺の隣にいてほしい。
私が否定すると、さらにギュッと腕に力を込める椿くん。再びドクンと心臓が飛び跳ねる。


すると彼は次の瞬間、私の耳元でボソッと囁いた。


「いいから今は、俺のことだけ考えてて」


「……っ」


途端に体中が、かぁっと熱を帯びていくのがわかる。


なにそれ。どういう意味なのかな?


それはやっぱり……ヤキモチだって思ってもいいの?


ドキンドキンと心臓の音ががうるさくて、椿くんにまで聞こえてしまっているんじゃないかって心配になる。


ダメだよ、私。そんなこと言われたら、うぬぼれちゃうよ。


これって、恋人のフリしてるからとかじゃ、ないよね?


期待しても、いいのかな……?


恥ずかしくて、ドキドキして、体が沸騰しそうなくらいに熱い。だけど、このまま離れたくない。なんだか夢を見ているみたいで。


そっと彼の背中に手を添え、身を預けるように彼の胸に顔をうずめると、椿くんの心臓の音が聞こえてきて、心なしか彼の鼓動も早くなっているような気がした。


気のせいかな……。


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