虹色シンデレラ
「先代の遺言にこだわることはないと思うけれどな」

もうそろそろ帰ろうかという時に、祐介が口にした。

そんなことは俺にもわかってる。


「もう動き出したように見えるけれど、先に進めば進むだけ引き返すことは難しくなる。止めるなら、今が潮時だぞ」

畳みかけるように言われると、つい思ってしまう。


「祐介、本当は虹子が好きなんじゃないのか?」

「はあ?弟から奪おうと思うほどの美人だと思うか?」

「いや」

人並だろう。


「性格は?」

「可もなく不可もなく」

おとなしいくせに猪突猛進で、天然な所もある。


「哲翔は、虹子が好きなのか?」

うーん。

「嫌いではないと、思う」


ああ、いつものパターンだ。

いつの間にか、祐介が聞く側に回っている。


「だったら、周りのことは気にせず大事にしろ」

そう言ったきり、祐介はまたグラスを口にした。
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