虹色シンデレラ
「奥様も旦那様もお止めになったのですが・・・」

乃梨子さんが悔しそう。


「そうね。今行けば騒ぎを大きくするだけだものね。でも、それができないのが哲翔なのよ」

知り合って1年もたたない私が言うことじゃないけれど、誰よりもまっすぐで正直な人だから。


「虹子様は物わかりがよすぎます。週刊誌の中には虹子様が咲良さんから哲翔様を奪ったって報道しているところもあるんですよ」

「ふふふ、そうらしいわね」


世間って悲劇のヒロインには寛容らしくて、報道のほとんどが咲良さんに同情的。

敵役は哲翔か、高宮家。
中には私の略奪愛なんじゃないかって書いているところまである。


「なぜ平気な顔をするんですか。虹子様は何も悪くないじゃありませんか。むしろ咲良さんの方に問題があるんだと思いますけれど」

私のために本気で怒ってくれる乃梨子さん。

「ありがとう。でも、相手は病人だから」


事故の日から、未だに咲良さんの意識は戻らないまま。

手足の骨折や頭部の外傷もあるそうで、どこまで回復するのかさえわからない状態。

そんな人に怒れるわけがないじゃない。
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