雨のち晴れ


私は雨宮美琴、高校1年生。

私には付き合っている人がいる。

とっても大切な人。

「美琴」

私を呼ぶ大切な人の声。

「晴馬!」

「悪い、待ったか?」

「ううん」

今は夏休み。

私たちは今からデートなのだ。

「美琴?」

「え?」

「ぼーっとしてたけど大丈夫?」

「え、いや少し考え事してただけ」

「そっか。じゃあ、行こう」

そう言って晴馬は手を差し出した。

「うん」

私は自分の手を重ねる。

大きく温かい晴馬の手。

人目を気にせずに手を繋ぐ。

最初のうちは恥ずかしかったけど、今は普通のことだ。

握った手から伝わる体温。

それだけで大切な人がいるって幸せなことなんだって実感する。

「何にやけてんの?」

「え?」

「今すごくバカみたいな顔をしてたぞ」

そう意地悪く晴馬は笑って言った。

「バカって何よ」

と頬を膨らませ、私は顔を背けた。

「可愛いな」

すねている私に晴馬は眩しい笑顔を向けた。

「もうっ!」

なんでこんな恥ずかしいこと普通に言っちゃうのかな.....?

私はそんな晴馬にいつも戸惑ってばかりだ

そんなくだらないやりとりをしながら青い空の下、私たちは街の中を歩いていた。

私たちは家も近く、小さな頃から一緒に遊んでいた。

晴馬は楽しい時も、辛い時もずっとそばにいてくれた。

私はそんな彼にしだいに惹かれていった。

けれどイケメンで誰にでも優しい晴馬は女子からの人気も高かった。

こんな私とは不釣り合いだ。

だから私は彼のことを好きであることをやめようと決めた。

そんなある日、晴馬から「好きだ」と言われた。

私は嬉しくてたまらなかった。


そして今日は付き合ってちょうど1年の記念日。

なのに晴馬は何も言ってこない。

忘れちゃってるのかな.....
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