桜の城のノクターン
立ち止まるフェニル。
その表情は途方に暮れていた。
ゆったりとした足取りで追いついたエスメラルダは、指先で髪を弄びながらフェニルを見やる。
うーん、と未だに悩む少女に、エスメラルダは投げやりに救いの手を差し伸べる。
「ついてらっしゃい」
急にかけられた声にフェニルは、なんと言われたのか分からなかった。
しかし、遠ざかるエスメラルダの背中を見て、ようやく理解した。
慌ててその背中を追う。