君は僕のもの 【続】
そして少しの間を置いてから、
「…愛梨を苛めたりしないで下さいね?」
ニヤリと不適な笑みを一つ浮かべて、
俺は再び向きを戻すと引っ張られて崩れたマフラーを直しながら歩いて行った。
結局あの先輩ってそういう人だったんだな…
なんて、
人間はよく分からないもんだから怖い。
一人家までの路次をいく。
空を見上げると星は綺麗に輝いてて、どうせなら隣に愛梨がいたらきっと喜んで騒ぐんだろうな…と、
そんなことを思うと妙に顔が綻ぶのが分かった。
こんなバイトまでして何かを買っても。
肝心の愛梨に嫌な想いをさせたら全く意味なんて無いのかもしれないな…
いつも通り側に居る方が良かったのかも。…とか。そんなことを想いながら歩く。
何だかんだ俺はやっぱり愛梨には甘い。
夜空に向けられていた俺の視線はいつのまにか愛梨の家に向けられている。
いつも通り。
インターホンを押してみれば、中からバタバタと足音が聴こえてくる。
─ガチャッ
「いっちゃーんっ!…あ、愛梨ったら凄くご機嫌斜めなのよ〜?」
出てきた途端に始まるトーク。
俺の親にそっくりだな…
「ははは、機嫌を直しににきました」
と俺は薄ら笑いを浮かべながら言うと、良かったわ何て言いながら、
俺を家の中に招き入れてくれた。