わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
侍女と護衛を連れさえいればクリフ様は私の行動に制限をかけることはない。

おかげで離れの館の中だけでなく、宮殿の中にある図書室に行ってこの国の歴史を調べたり、魔法省の長官に会いに行って魔法についての話を聞いたり、厨房に出入りしたりと何でもありの毎日で少し申し訳ない気もする。

離れで働く人たちだけでなく、宮殿で出会う人たちのほとんどは私に対して友好的で私と出会うと笑顔で会釈してくれたり、挨拶をしてくれる。

『未来の王妃』的な立場にいるからなのかもしれないけど、嫌な態度をとられるよりはずっといい。


「今日も魔法省に行っていたんだって?」
「そうなんです。午後のお茶の時間に長官が呼んで下さったのでお邪魔してきました」

夕食に戻ってきたクリフ様が微笑を浮かべながら今日の行動を聞いてきた。

「魔法省の方の制服ってファンタジー映画みたいでかっこいいですね、私も着てみたいですって言ったら長官が「どうぞ」って1枚くださいました。もらっちゃってもいいですか?」

「魔法省の制服?あの、紫のフード付きガウンか?」

「ハイ、急にやめてしまった見習いさんがいたらしくて余っているんだそうです。その方男性にしては小柄で、他の誰もそれを着られないんですって。だからどうぞって言われたんですがーーいいですか?」

「楓は欲しいんでしょ?いいよ」

やった。
実は嬉しくてたまらない。
これがまた子どもの頃に観たファンタジー映画で魔法使いが着ていたガウンにそっくりなんだ。

魔法学園で知り合った男女の恋と友情の物語。
原作を何度も繰り返し読んで、映画は3回観に行った。
何回観てもワクワクドキドキしてあの世界観に憧れたものだ。

クリフ様の許可をいただいて私はニマニマが止まらない。
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