闇の果ては光となりて
霧生の誕生日会当日の溜まり場は、異様な熱気に包まれていた。
総長と一緒に霧生を追い出した私達は、みんなで手分けして1階のフロアーを飾り付け中。
保育園のお誕生日会を彷彿させる手作りの垂れ幕や、部屋中の壁に飾り付けたキラキラしたモールや造花。
チームのみんなが百均で買い揃えて来てくれたんだよね。
本当、最近の百円均一は色んなパーティーグッズが揃ってて助かるよ。
沢山並べられた長いテープルには、テイクアウトしてきたり、厨房で作ったりした料理が並んでる。
手作り感たっぷりのパーティ会場を見渡し、私は満足げに笑った。

「みんなの気持ちがたっぷり籠もってるよね」
「だよな?」
隣に立ってるコウもどこか嬉しそうだ。
「そりゃ副総長の誕生日だもん。みんな張り切るよ」
ねぇみんなと、光が声を掛ければ、
「「「「「うぉー!」」」」」
拳を振り上げたメンバー達が雄叫びを上げた。
うん、ちょっと体育会系だね。
彼らの顔を見れば霧生が凄く慕われてるのがよく分かる。
この場所はやっぱり居心地がいいね、霧生。
彼の喜ぶ顔が早く見たくなった。

「そんなニヤけた顔してねぇで、さっさとケーキを仕上げてこいよ」
コウにポンと背中を押される。
「あ、本当。早くしなきゃ」
早くしないと、帰ってきちゃうじゃん。
焦った顔の私を、コウと光は仕方ない奴だなんて言いながら微笑ましげに見ていて。
少し恥ずかしくなった私は彼らに背を向け、1階の調理場に向かって駆け出した。



ケーキのスポンジは昨日の夜に瑠奈さんに教えて貰いながら作ったから、今日はフルーツと生クリームでデコレーションするだけなんだよね。
鼻歌混じりにケーキを仕上げていく。
霧生は喜んでくれるかな?
美味しいって言ってもらいたいな。
こんな普通の女の子みたいな感情を持てるようになったのは、私を拾ってくれた霧生のおかげなんだろうな。
ホイップクリームの入った絞り袋を片手にフフフと笑う。

誰かを思う事がこんなにも楽しくて、こんなにも愛おしいものだなんて、私は知らずに生きてきた。
狂おしい程の愛は、時に痛みを伴うけれど、私はもう手放せやしない。
人を愛する事を知った今だから、お母さんが感情を無くし、全てを諦めてしまった気持ちが少なからず分かる気がした。
愛する人を亡くした彼女のやり場の無い思いが、現実と向き合う事を拒絶したんだろうね。

愛されたいと泣いた夜も、自分の存在の意味が分からないと藻掻いた日々も、今を迎える為に必要だったんだと思えるんだ。
霧生に出会う為に、私はきっと生まれてきた。
ううん、霧生だけじゃない。
ツッキーや総長達チームのみんなと出会う為だったんだよね。
霧生達と出会えたから、私は闇の底から這い上がれた。
だからね、大好きな霧生に沢山のありがとうを伝えたい。
「生まれてきてくれてありがとう。私を見つけてくれてありがとう」って。

出来立てのケーキの乗ったお皿を持って立ち上がる。
「神楽、霧生が帰ってきたぞ」
「今行く!」
コウの呼ぶ声に返事をして歩き出す。
ケーキとプレゼントを受け取った霧生が、少し照れ臭そうに笑う姿を想像して、私はゆるりと口角を上げた。

「霧生、Happy Birthday!」


TO be continued.
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