闇の果ては光となりて
霧生に連れられソファーに腰を下ろすと、総長が苦笑いで話しかけてきた。
「神楽も独占欲の塊に気に入られて大変だな」
「···笑ってないで何とかしてくださいよ」
総長なんだから。
「別に害もないからいいだろ」
よくねぇわ、とツッコめなかったのは、やっぱり相手が総長様だからである。
「神楽は俺の猫なんだから、他に無駄に尻尾は振らなくていいだろうが」
「ずっと気になってたけど、私は私のモノで霧生とは他人だよね」
霧生の俺様発言に、苦言を呈しておく。
妙な持論を振り回されるのは、大迷惑だよ。
「はぁ? 俺が拾ってきただろうがよ」
「拾った拾ったって言うけど、私は落ちてたわけじゃないからね」
人間が落ちてるとか、普通に考えてないよね。
「海に落ちただろうが!」
「それは、私の事を自殺志願者だと誤解した霧生が勢い余って海に突き落としたんだよね?」
私がわざと海に落ちたみたいな言い方に、カチンと来た。
「···」
自分でも心当たりがあったらしく、無言になる霧生。
「それに、海から上がるのも私は自力で泳いで自力で防波堤をよじ登ったんだからね」
そうだ、そうなんだよ。
私が、一人で頑張りました。


「ククク、そりゃ霧生に非があるな。と言うか、お前が落としたのかよ」
私達のやり取りを見ていた総長がお腹を抱えて笑いだした。
「僕も知らなかったぁ。神楽ちゃん、災難だったねぇ」
対面のソファーに座っていた光が、前のめり気味に私を見た。
「でしょ? 春の海は冷たかったぁ」
昨日の夜は色々と衝撃過ぎて、寒さを感じる間も無かったけど、思い出せば確かに無茶苦茶冷たかったんだよね。
「お前、可愛くねぇぞ」
「可愛く見せるつもりは元々ありませ〜ん」
イーっだと霧生に向かって歯を見せた。
「気の強えぇ女だな」
「どうとでも言って」
海に落とされた時から、霧生に対する態度が軽めなのはまぁご愛嬌って事で。
美丈夫に見下され睨まれると、独特の威圧感があるもののそれがどうしたってんだ。
すっかり緊張もしなくなった図太い神経の持ち主の私には、なんの障害にもなりえないよ。

「じゃれ合いはそのぐらいにして、本題に入っていいか?」
あ、総長の存在忘れてた。
そして、じゃれ合っては無いと言いたかったが、そこももちろん飲み込んだ。
だって、やっぱり総長だもん。
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