愛を捧ぐフール【完】
愛を捧ぐフール

動き出す因果

「こんにちは。久しぶりだね。クラリーチェ」


 急に声を掛けられて、読んでいた本をびっくりして取り落とした。声は辛うじて出なかったが、心臓に悪い。


 元凶の人は、窓から難なく侵入して私の落とした本を拾い上げた。


「ファウスト様……。まだ前に会ってからそんなに時間空いてませんが……」

「そうかな?毎日顔を合わせてた時と比べると、全然久しぶりって感じがするよ」


 ニコニコとご機嫌そうに微笑むファウスト様は、私の姿を見ると安心したように肩の力を抜く。でも、それは私も同じだった。


 ファウスト様といると、自分が確かにここにいるような、ここが自分の居場所なんだって思えるのだ。


「何を読んでいたんだい……?『可哀想な王妃様』……」

「あ……」
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