愛を捧ぐフール【完】

愛を乞うフール(ファウスト)

 国王になる為に必要なものは、賢明であるよりも何よりも野望なのだろうと僕は思う。
 この国の第一王子ファウストとして生まれる前、古代の王国の1つであるアルガイオを最期に導いた国王であった僕は思う。


 幼い頃から賢明な国王であれと、そう教育されていた僕は常に誰かに傅かしずかれていた僕は誰から見ても誇れるような、期待に沿った王子であった。


 両親は勿論、臣下も他国の外交官にも僕は褒め称えられた。はじめは、そんな自分を本当に誇らしいと思ったのだ。
 当たり前だ。その為に血の滲むような努力し続けて、それが認められていたのだから。嬉しくないはずがない。


 いつからそれが、苦痛になったのだろうか。
 本当に些細な事だった。


 ーー本当にクリストフォロス様は賢明な王子ですな。これならアルガイオ王国の未来は安泰でしょう。
 ーーそうですな。本当に完璧な王子様だ。


 たまたま聞いてしまった貴族同士の会話。もう何度も聞いていた僕への賛辞の言葉。
 でも気付かなかった方が幸せだったのに、愕然とした。
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