愛を捧ぐフール【完】
「ずっとずっと、貴女が邪魔でした。美貌と生家の権利以外大したものも持たず、子供も成せない役立たずの王妃があの偉大なクリストフォロス陛下を虜にし、あまつさえクリストフォロス陛下を堕落させた……。エレオノラ王妃様がお亡くなりになられた時、やっと私はクリストフォロス陛下が目を覚まされると歓喜したのです」


 ーーこの人は、誰だ?


 面と向かって詰(なじ)られて、胸に鈍い痛みが走る。だって、全部私がずっと感じていたことだったから。


「なのにクリストフォロス陛下は腑抜けになってしまわれた。跡継ぎも出来たのに、クリストフォロス陛下は生きる気力を失われてしまったのだ……!」


 絶句する私なんか目もくれない。
 アウレリウス公爵は狂ったように語り続ける。

 知らなかった。
 私が居なくなった後のクリストフォロス様が、生きる気力を失くしてしまっていたなんて。


「前世の記憶を持ったまま、今のアウレリウス公爵家の嫡男に生まれ、第一王子であるファウスト殿下にお会いした時、私は神に感謝しましたよ。今度こそ、クリストフォロス陛下を後世に残るような賢王として崇める事が出来るとね!」


 思い出したように私を再び睨み付けたアウレリウス公爵は、背筋が凍るような無機質な声で告げた。


「前世のクリストフォロス陛下は賢王であらせられた。貴女がいなければね。だから、今世はファウスト様が道を踏み外される前に


 ーー貴女を消す」
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