愛を捧ぐフール【完】

2人の妻

 死ぬ少し前に思ったことがある。


 ーーきっと、この恋は誰も幸せにしない、と。


 私も、彼(クリストフォロス様)も、側室であるテレンティア様も苦しむだけだと。
 それは、私が死んだ後も変わらなかったらしい。


 私に薄暗い色をした瞳を向けるテレンティア様を見て、私は痛い程感じた。


「クリストフォロス様はエレオノラさまが亡くなられた後、しばらく執務で忙しくしておられました。クリストフォロス様は国王陛下ですもの。休み無しでひっきりなしに仕事をしなければいけないのは分かりますわ。その疲れを癒して差し上げるのが、わたくし達の役目だと、エレオノラ様はいつの日だったか仰いました」

「え、ええ……。確かに言ったわ……」

「そんなの……そんなの分かりきっていたましたわ……!わたくしずっと貴女が邪魔で嫌いで仕方がなかったんです……!」


 その言葉に私の指先から冷たくなったのを感じる。部屋の温度がどんどん下がっていくように感じた。
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