愛を捧ぐフール【完】
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 果たして何時間続いたのか。いつの間にか感覚が麻痺していた。
 天にはすっかりと日が昇り、明るく僕達を照らしている。


 清々しい朝だった。清涼な風が吹いている筈だった。鉄錆のような匂いが、風と混ざっていた。辺りの地面は一面血で汚れている。
 敵味方関係なく、馬も歩兵も死体に足を取られたりする者もちらほらいた。


 どこを見ても、凄惨な有様だった。


「……わぁっ?!」


 近くにいたシストが、相手の槍を避けると同時に転がっていた遺体に引っかかって体勢を崩す。その隙を逃さなかった敵は、シストに追い討ちをかける為に槍を振り上げた。


「……っ!!」

「ファウスト殿下!!」


 一瞬、無防備になった敵の胴体に向けて剣をふり抜く。
 目の前で、赤が舞った。


 人を斬る感覚。
 それと同時に襲ってくる自分の脇腹への衝撃。
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