アイスクリームと雪景色
美帆は小さくため息をついた。

(才色兼備の彼女らをも虜にする魅力があいつには備わっている。それはわかるけど、敵視されるいわれはない。なぜなら私は里村宏道の教育係。あくまでもただの先輩だから)

案内された部屋の前に辿り着くと、美帆は秘書の前に回りこみ、真鍮のドアプレートを見据えた。

【会長室】

(今年のイブを、私はひとり静かに過ごすはずだった。目立たず騒がず。それなのに、なぜこんなことに? 予定を狂わせたのはあいつ。このプレートの力で)

「どうもありがとう。ここからは私ひとりで結構よ」

「えっ、でも」

ぽかんとする秘書に自分達の関係を教えるため、美帆は拳を振り上げた。

ドドドドン!

怒りを込めてノックし、返事が聞こえる前にドアを開いた。

勝手な真似をする後輩は、イケメンも身分も関係ない。指導するのみだ。
< 141 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop