アイスクリームと雪景色
美帆はハッとする。

今、自分は何の迷いもなく休日出勤を申し出た。クリスマスシーズンの休日をともに過ごす恋人がいないのは、振られたばかりだから。振られたばかりの頃は、今年のイブは目立たず騒がずひっそりと過ごそうなんて、下を向いていたのに。

今の美帆は、恥ずかしいとか肩身が狭いとか、考えることもなく堂々としている。

――あいつが来てから、成田も元気になったみたいだし、俺としては良い相性だと思ってるよ。

(私が復活したのは、里村くんのおかげってこと?)

そう言えなくもないかもしれない。でも、良い相性というのは、ちょっと違うような気がする。美帆は首を傾げるが、箱崎はご機嫌だ。

「成田先輩、早速日程表を作成しますね。何か希望があれば言って下さい」

「う、うん」

「女性は先輩一人ですから、特別にサービスしますッ」

「いや、もう……ほんと、気を遣わなくていいから」

やはり里村は、私のために旅行を計画したのだ。

身体ごと迫り来る情熱に頭痛がしてきた。そしてなぜか、元カレの坂崎小次郎が思い浮かぶ。今はもう、遠い思い出のように懐かしい。

「とりあえず、今日はもう帰るわ。いろいろと、疲れたし」

「あっ、そうですよね。お疲れ様です」

バッグを手にオフィスを出ようとすると、すかさず里村もついて来る。

(まったくもう、疲れさせたのはあなたでしょ)

箱崎はじめ同僚らに微笑ましく見送られ、里村とともに職場を後にしたのだった。
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