アイスクリームと雪景色
いろいろな感情が押し寄せてきて堪らない。失恋した直後の状態に、美帆は戻っていた。
(疲れた……早く帰ろう)
急ぐあまり、何度も転びそうになった。もどかしくなって立ち止まり、ロングブーツを恨めしげに見下ろす。
ここは、通用口まであと数歩の場所である。
と、その時、後ろから近付いてくる足音に気付いた。
「え……?」
おそらく、美帆の後からエレベーターを降りた誰か。しかも二人ぶんの足音だ。
美帆は戦慄した。
振り向いてはいけない。このまま気付かない振りで前に進まなくては。
会ってしまったら何食わぬ顔で挨拶すればいいなんて、現実を無視した強がりに過ぎず、いざとなればこんなもの。
美帆はブーツから目を上げ、そのまま歩き出そうとした。
「成田さん!」
ロープを投げられ、あっという間に捕獲される。そんな感覚だった。
4年間、「美帆」と呼び続けてくれた彼は今、苗字に敬称を付けて、他人行儀な声をかける。でもそれは当然のこと。二人はもう、他人なのだから。
あの日、最後に会ったレストラン。残された美帆は、誰もいなくなった椅子を眺めていた。
美帆の中に、彼と結ばれ、そして別れるまでのできごとが、一気に蘇ってきた。
(疲れた……早く帰ろう)
急ぐあまり、何度も転びそうになった。もどかしくなって立ち止まり、ロングブーツを恨めしげに見下ろす。
ここは、通用口まであと数歩の場所である。
と、その時、後ろから近付いてくる足音に気付いた。
「え……?」
おそらく、美帆の後からエレベーターを降りた誰か。しかも二人ぶんの足音だ。
美帆は戦慄した。
振り向いてはいけない。このまま気付かない振りで前に進まなくては。
会ってしまったら何食わぬ顔で挨拶すればいいなんて、現実を無視した強がりに過ぎず、いざとなればこんなもの。
美帆はブーツから目を上げ、そのまま歩き出そうとした。
「成田さん!」
ロープを投げられ、あっという間に捕獲される。そんな感覚だった。
4年間、「美帆」と呼び続けてくれた彼は今、苗字に敬称を付けて、他人行儀な声をかける。でもそれは当然のこと。二人はもう、他人なのだから。
あの日、最後に会ったレストラン。残された美帆は、誰もいなくなった椅子を眺めていた。
美帆の中に、彼と結ばれ、そして別れるまでのできごとが、一気に蘇ってきた。