アイスクリームと雪景色
(私は冷たい女よ。別れた恋人に指摘されたようにね)

近付いてくる駅ビルを見やると、降り続く雪と夜の闇のなかで、ぼんやりと霞んでいる。

失恋して、少しは思いやりを覚え、優しさを知ったかもしれないが、根本的なところがそう簡単に変わるはずはないと美帆は思う。

反省して前進すればいいと、他でもない里村が言ってくれたけれど、簡単ではない。

(雪か、あるいは氷。そう、まるでアイスクリームのように、甘いようでとてつもなく冷たいのが私かもしれない)

ちょうどいいたとえを思いつき、我ながら相応しい仕事に就いているのだなと、運命の皮肉に納得した。

だが、里村はそんな心情など知らず、ひたすらに熱く見つめてくるから美帆は困惑する。

本気だと分かるから困惑するのだ。

初対面からこっち、自分に対する彼の態度や言動を思い返せば辻褄が合う。

なぜ異様に慕ってくるのか、お上手を言うのか、出社から退社後まで付きまとうのか、考えなくても好意だと分かるが、好きなのだと実際に言われたら、なるほど筋は通る。

でも、それが男性としての「好き」だったとは。
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