【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
マホガニーのダイニングテーブルにアイボリーのテーブルクロス。
その上に並んだのは、光一作の肉野菜炒めと中華風卵スープ。
華のつくったほうれん草のナムルとデザートのヨーグルトゼリー。

ふたり「いただきます」
おおざっぱに作り上げた光一の料理だったが、見た目も味も申し分ない出来だった。
光一「な、うまいだろ?」
華「うん。おいしいけど、私はやっぱりお料理はレシピ通りにきっちり作りたい派!」
光一「そんなん、時間を無駄にするだけじゃん。よっぽの味音痴じゃなきゃ、味見しながらやればいいんだよ」
華「__時間の無駄ぁ? おいしいものを作りたいと思って頑張るのに、その言い方って……光一さんてやっぱり性格に難ありだよ」
光一「知ってる。それを見抜けなかった華はやっぱりバカだったんだな」
光一はふんと鼻で笑った。華はがくりと肩を落としながら、言う。
華「共同作業で目指せ、仲良し夫婦!と思ったけど……作戦失敗か」
光一「だから言ったじゃん。無駄だって。仮面夫婦のなにが悪いのか、俺にはわかんないな。いいじゃん、お互いに気楽で」
華「私は嫌なの!まだ諦めないからね。明日の日曜日は光一さんは仕事?」
光一「いや、明日は休み。急な呼び出しがなければだけど」
華「じゃあ、デートしましょ。結婚前は私の好みに合わせてもらってばっかりだったから、明日は光一さんの好きな過ごし方をするの」

意気込む華とは対照的に、光一の反応は薄い。薄いなんてもんじゃない。
光一「好きに過ごしていいなら、ひとりでいたい派なんだけど……」
華「それは却下です」
光一「張り切ってんなぁ」
光一が横目で華を見る。その顔は少し呆れているようだった。
華「やっぱり、うざいっていうか面倒くさい?」

華(私は少しでも夫婦らしく、仲良くなれたらって気持ちがあるから、そりゃ張り切るけども、光一さんにはその気持ちが皆無なんだもんね。温度差があるのは覚悟の上だけど……)

光一「まぁ、なんていうか、すげー疲れた」
正直すぎる彼の感想が、華の胸をぐさりと突き刺す。
光一「けど、けっこう楽しかった。悪くない一日だったよ」
そう言って、彼は目を細めた。向けられる眼差しが、思った以上に優しくて、眩しくて、華は直視できなかった。
華「や、やっぱり上から目線!」
光一「ははっ」





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