彼女を10日でオトします
 エレベーターで4階まで。てこてこ廊下を歩いて、突き当たりの角部屋。

 玄関を開けると、どーん。12畳、親父名義のワンルーム。
 
 贅沢言えば、もう少し狭い部屋がよかったな。
 親父の稼ぎとは言え、税金で必要以上の広さの賃貸料を払っていると思うとね。

 ま、そんなこと言うんだったら、実家で暮らせってね。
 でもさ、俺、我が儘言いたい年頃なのよ。
 
 まずは、エアコンのスイッチをつけて、冷え切った部屋を暖める。
 
 時計をみると、約束の7時まで、たっぷり5時間はある。
 いっぱい寝られるじゃないの。
  
 ジャケットを脱いで、ネクタイをはずした格好で、ベッドにダイブ。
 本当は、全裸になりたいところなんだけど、あいにく部屋の中はまだ肌寒い。

 俯せで、枕に頬を沈めれば、すぐに頭の中がふわふわしてきた。
 
 貴史ちゃんとこ(保健室)のベッドより、やっぱ自分のとこの方が、断然気持ちいい。
 
 今なら、俺、犬の気持ちがわかるかも。犬ってほら、自分の匂いがないと安心できないらしいじゃん。
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