彼女を10日でオトします
 キョンは、教卓の前、いつもの席に座っていた。

 次の授業の仕度をしているみたい。机の中を覗き込んで、教科書を引っ張り出していた。

 俺は、なるべく遠回りして、キョンに近づく。後ろから。

 キョンは、長い三つ編みを手の甲で背中に払う。

「キョーン」

 勢いよく、キョンの頭に抱きつくと、キョンは「きゃ」と言って、椅子に座ったまま上体を弾ませた。

 いいね。予想を裏切らないリアクション。

「た、たすくさん?」

 肩を上げて、体を縮こまらせるキョンの耳に口を近づけた。

「キョンは、頭が痛くなある。痛くなある」

 そんな呪文をそっと唱えると、

「いい加減にしてよ。私は、至って健康よ」

 と、両手で押しのけられた。つまんないの。

「キョン、ちょっと来てよ。イイコトしてあげるからさあ」

「そんなこと言われてついていく女ってただのバカよね」

 つれないキョンちゃんは、次の授業の仕度の続きに取り掛かる。

 ちぇ。

 仕方ない。周りから固めるか。

 俺は、窓際、一番後ろの席を目指す。
 コットンが座ってる。
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