彼女を10日でオトします
「そうですね。景気はどうですか?」

「景気が良い所をさがす方が困難だろ」

「落ち込んでるんですか?」

「ヘルス、ピンサロ、フロ、キャバクラにホストクラブ。
底なしだ。もちろん、これも」

 高智さんは、結晶入りの子袋を皮肉めいた顔のよこで振った。

「でも、金って、あるところにはあるんですよね」

「ほう」

「高智さんだって、わかってるじゃないですか。
だから、俺みたいなガキと喋ってる」

 膝に肘を乗せて身を乗り出した俺を、爬虫類と似た冷たい瞳で無表情にみつめる。
 
 高智さんにとって俺は、ただの駒。政治家戸部というとびっきりの後ろ盾を作る為の。

「『エレン』にいた、ナナさん、覚えてます?」

「ああ、お前がさばいてたクサキチガイのホステスだろう?」

「最近会いました」

「そう言えば、最近見ないな」

「面白い話があるんですよ。と、それをセットで」

 高智さんがつまんでいる袋を指差した。

「だから、もう、川原にはさばかないでほしいんです」

 高智さんは、子袋をテーブルに投げ出して前髪をかきあげた。
 すぐに形のいい額は、はらりと、おりたそれに隠れた。

「はは。たすく、さっきまで俺の言葉に納得してただろう?」

「ついさっきまでは、高智さんの言葉で他のルートだと思ってたんですけどね。
今のご時勢、メリット云々言ってられないみたいなんで。
それに高智さん、煙草、すぐ消してましたし」

「それまで気づかなかったか。
昔のお前なら、俺の第一声で気づいただろうな」

 あの頃は、何に対してもピリピリしてたからだろうね。
 でも、俺、今は。

「フツーのコウコウセイですから」

「くえない腹にイチモツ元中学生だろ」

 

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