彼女を10日でオトします
「はいはい。あんたの話はわかったわよ。よくもまあ、一人でペラペラと」

 保健室。ベッドの上で不機嫌なコットン。

 勘違いしないでよ。俺は、椅子に座ってる。いくらなんでもコットンの上には、のらないから。

 コットンがいつもの貧血で倒れたから、俺が運んできたってわけ。

「あー、ちゃんと聞いてよぉ。俺、ほんとにね――」
 
「ああ、もう。その『キョン』って呼び方でだいたいわかった。たすくが、私以外に変な愛称つけるなんてねぇ。
相当気に入ってる証拠」
 
「あら、いやだわぁ。コットン、ヤキモチぃ?」
 
「アホか。死ねっ!」
 
 コットンは、荒っぽく寝返りをうって俺に背中を向けた。

 そして、コットンは、いい位置に落ち着くと、大きなため息をついた。
 たぶん、俺に聞こえるように、わざと大きくはいた。

「なあ、琴実。昨日は悪かった。言い過ぎた」

「たすく、あんた、卑怯よ。肝心な所ですぐ、昔に戻る。
昔のあんたに逆らえないの知ってて、口調変えてるんでしょ」

 卑怯か。

「琴実が言うんだから、俺はきっと卑怯なんだろうな。でも――」

「許さない……。許さないわよ! たすくなんか!」

「はは。そうくるか。
……まあ、いいやぁ。コットンは俺の事、絶対許すもんね」

 俺は、しばらくの間、震えるコットンの背中を見つめ、椅子から腰を上げた。

 カーテンをシャッと開くと同時に
「たすくのばか……」
嗚咽が混じるコットンの声が耳をかすめた。

 コットンを泣かせたのは、これで何回目だろう? いや、何十回かな?

 コットンを慰めるのは、彼氏であるヒデの役目って考えてるあたり、俺はやっぱり、コットンの言うように卑怯なんだろうねぇ。

 泣かせたのは俺なのに。

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