オトナだから愛せない
「俺以外なんて認めない」
「最悪だ傘なんて、持ってないよ……」
学校の昇降口で突然降り出した雨を見上げならぽつりとひとり立ち尽くした。
走って帰るにはあまりにも強い雨粒にスカートのポケットからスマホを取り出す。
「まだ、5時か……」
「胡桃、どうした?」
と、名前を呼ばれて振り返ればそこにいたのは同じクラスのタレ目が可愛らしいサッカー部の杉野くんだった。
「あ、杉野くん。傘がないのですよ」
「じゃあ、入ってく?」
雨を指差しながら杉野くんの質問に答えれば、黒色の折り畳み傘を広げて杉野くんが笑った。
「ちょっと小さいけど、ずぶ濡れになるよりはましでしょ?」
「でも、そうしたら杉野くんは元々濡れなくていいのに、私と一緒に濡れちゃうよ」
私がそう答えると杉野くんは「んー」と眉根に皺を寄せて考えながら、どうやら私のその答えに納得のいっていない様子。