オトナだから愛せない
「しのぶれど」
俺の平日は朝5時に起きるところから1日が始まる。
起きて前の日にコンビニで買っておいたパンをかじりながらコーヒーを飲む。歯を磨いて、ワックスとスプレーで髪をセットし、スーツに着替える。
とくに代わり映えのない1日の始まり。
革靴を履き、玄関の扉を開く。朝の空気にふわりと包まれて、家の鍵をビジネス鞄の中にしまった。
エレベーターに向かう途中、隣の家の前で足を止める。ポケットからスマホを取り出した。時刻は6時5分。
「まだ、起きてるわけないよな……」
独白を溢して、インターフォンに伸ばしかけていた手を引っ込めた。これもかなりの確率で毎朝の日課になっている。
手にしていたスマホの画面をタッチし、目当ての人物へメッセージを飛ばした。
