オトナだから愛せない
もっと頼ってよ。もっと、私に甘えてよ。皐月くんは大人で私はまだ子供で、早く皐月くんに近づきたくて、大人になりたくて。
皐月くん。早く元気になってよ。
布団から出ていた皐月くんの手にそっと触れる。布団の中に戻して、お粥を作りに行こうとした。
でも、ぎゅっと皐月くんに掴まれた指先。
「皐月くん?」
「……」
「ご飯、作ってくるね」
「……くる、み……」
「皐月くん、なに?」
「……」
「……」
「くるみ、ここに……いて……」
「皐月くん……」
皐月くんがそう言ってくれるなら、私がすることはひとつだよ。
皐月くんのベッドの横に座り私は上半身だけをベッドに預けた。皐月くんの掌をぎゅっと握って。
「皐月くん、早く元気になってね」
私はそのまま、皐月くんと一緒に眠りについた。
皐月くんあのね私、すごく幸せな夢を見たんだよ。
「ん、……胡桃……?なんで、帰れって言ったのに」
「……」
「て、帰れって言っても帰らないのが、胡桃だよな」
「……」
「なぁ、胡桃あの日も、今日もありがとう」
「……」
「……好きだよ胡桃……」
そう言って、皐月くんが優しく頭を撫でてくれる、素敵な夢を。
