夜明け3秒前
「……うん」


兄のもとまで近づいて、同じ目線になるようにしゃがむ。


「……うん、って」
「うん、いいよ」
「は……」


兄は困惑した様子で私を見る。


「……私、すぐに許せないかも。喧嘩したらこのこと盾にして、何度も話に持ち出すかも」

「……うん」

「……それでもいい?」

「ああ、いいよ」


兄は昔みたいに、眉間にしわをよせて困ったように笑った。
その笑い方、ずっと変わってなかったんだね。


「……う、ううっ、うわあああん」
「は、ちょ、凛月……!」


もう気持ちがいっぱいいっぱいでとうとう溢れだした。
声も我慢できずに、また子どもみたいに号泣する。


兄はすごく戸惑いながら私の頭を撫でる。
私が何も言わないとわかると、ぽんぽんと子どもを泣き止ませる手つきに変わる。

それがあまりにも優しいから、涙は止まるどころか溢れる一方だった。
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