夜明け3秒前
素直に座ってくれた2人の前に、さっきまで用意していたマフィンを置く。


「すごい、これ凛月が作ったの?」

「うん。流川くんがマフィン好きだって清さんに教えてもらって」


答えると、流川くんは目の前にいる清さんを見る。


「千那の好きなものを教えてほしいって言われたんだよ。最初はアイスティーって答えたんだが、それ以外でって言われてな」


はははっと楽しそうに笑う清さん。
流川くんがおつかいに行ったのも、協力してもらったからだ。

サプライズするぞ!っていうわけじゃなかったんだけれど、お菓子作りはしたことがなかったから不安で。

だから何回か練習をしたくて。
自分が食べるためじゃなくて、2人に食べてもらうためだったから、少しでもいいものを用意できるようにしたかった。


「たくさんお世話になってるし、プレゼントももらったから、少しでもお礼になればな、と思いまして」


流川くんには上手くかわされちゃったけれど、自分なりにちゃんとお返しがしたかった。

これで足りるのかはわからないけれど、何もしないよりはましだと思って。
ちらっと流川くんを見ると、彼も私を見ていたようで目が合う。


「ありがとう、すげー嬉しいよ」


キラキラした笑顔を向けられて、私までつられてしまう。


「さっそく食べていい?」
「うん、どうぞ!」
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