恋なんて、しないはずだった
「最悪な誕生日.......」


さっきまで特別な日でキラキラ輝いていたものがすべて色を失ってしまった。


「わかってるよ、仕方ないってことくらい」


誕生日なんかよりも、人の命のほうが大事だし、そばにいてあげるべきだってわかってる。
でも、相手は多分まだ大我のことが好きなんだ。
そんな人の大変なときにそばにいて、その子の想いは募るに違いない。
大我が友達を大切にするところは大好きだけど、自分のことを好きな人も優しくするのはモヤモヤしてしまう。


「こんなこと思いたくないのに........」


あたしはひとつの望みを賭けて、大我へメッセージを送る。

──やっぱり、今日会うこと諦められなくて、待ち合わせ場所にきちゃった。

なんて、面倒な女なんだろう。


──待ってる。会いたい。


こんな面倒な女、あたしが大嫌いなはずだったのに。
あたしはいつからこんな面倒な女になったのだろう。


──ごめん。友達が心配だから行けない。今日中に帰れるかもわかんないから、家に帰ってて。

大我からのメッセージはそんなものだった。
大我にしてはあっさりしているように感じたけど、きっとそれどころじゃないし、こんなことを言い出す女が面倒だと思っているのかもしれない。
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