恋なんて、しないはずだった
「あれから、瑠樺ちゃんは?」


「なんもねーよ。忘れてたとこだ」


「うそばっか。碧ちゃんに瑠樺ちゃんのこと重ねてんだろ」


「.......っ」



最初、碧が転校してきたとき、誰とも話さない様子をみて、何とかしないとならないと思った。
でも、碧自身がそれを望んでいるような気がして、関わることを躊躇していた。

でも、俺のバイト先に現れたあの日、直感で「こいつはきっと求めてる」って思っちまったんだよな。

それが、瑠樺と重ねてるっていうならそうかもしれない。
同じ目にあわせたくないって思いはたしかにあった。



「遅れちゃってごめんね」



カランという足音と共に声が聞こえて、見れば浴衣姿に髪の毛をお団子にしている碧がいた。



「わー!碧ちゃん、めっちゃかわいい!」


「おばあちゃんが来ていきなさいって、出してくれて.......」



少し照れたように笑う。



「ま、馬子にも衣装ってやつだな」



俺から出たのはそんな言葉しかなくて。
碧が可愛いのなんて、バイト先に初めて来た時からわかってて。
でも、いつも以上に可愛い碧に直視なんかできない自分がいて。

< 40 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop