恋なんて、しないはずだった
「あー、碧ちゃん。あっちの部屋に移動だってー。はい荷物」


戻ろうとしたところにちょうど六花ちゃんが出てきた。


「あ、ありがと.......「碧!」


六花ちゃんにお礼を告げて、荷物を受け取るとバタバタっと足音がしたかと思ったらグイッと肩を掴まれる。


「へ.......?大我.......?」

「大丈夫だな?」

「.......え?」


息を切らしている大我からはすごい急いでここまできてくれたということがわかる。


「少しくらいなら大丈夫だから、席取っておくね」


六花ちゃんがヒラヒラとあたしに手を振って、隣の部屋へと入っていく。


「.......ありがとう」

「ちょいあっち行こうか」


あたしの手をぎゅっと握って、歩いてすぐの人の少ない中庭へと出る。


「わざわざ来てくれたの?」

「さっきの電話普通じゃなかったろ。どーした?.......って、え!?」


あたしの顔を覗き込む表情があまりにも優しいからあたしの瞳から涙がこぼれ落ちて、大我がめをみひらく。


「元々いた地元出身って子がいて、怖くなっただけだよ」

「知り合いではなかった?」

「.......うん。別の高校だったぽい」

「そっか.......。うちもA町のやついたぞ。案外北海道から来てんのな」

「.......そっか」
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