恋愛暴君のきみは、ときどき甘い
溢れる想いと自己嫌悪


「なんだよこの主人公。男にこんな寒い台詞言われて何が嬉しいんだよ」

「…………」


久しぶりに凌といられる昼休み。

せっかく2人きりになれたと思えば、甘い時間を過ごすこともなく、少女漫画の主人公にケチをつけているこの男。


今、日本中の女子を敵に回したこと、きっとこのバカには分からないんだろうな。


「ちょっと、人の漫画勝手に読んどいて文句言わないでよね」

「や、おかしいだろ。なんでここで急にこんな展開になれるんだ。この男はどっから湧き出たんだよ」


湧き出たって……。

仮にもヒーローの登場をまるで虫が出たみたいな言い方だ。


「それがいいの。女の子はみんな、そういうのにキュンとするの」


私が言えば、眉間の皺をさらに深くして、また漫画とにらめっこを始めてしまった凌。


そもそも、男の子が少女漫画を読んで面白いのだろうか。

コンビニで少年漫画の雑誌を立ち読みしたことがあるけれど、それこそ私には面白みが理解出来ないものだった。


登場する女の子の胸がみんな無駄に大きいのも気になるし……。


まあ、たまにはこういうまったりと過ごす日があっても良いのかもしれない。


なんて思いながらも、正直少し寂しい気持ちもあったりして。

私も漫画の主人公みたいにもう少し素直な女の子になれたら、凌との距離を縮めることが出来たりするのだろうか。

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