同期は蓋を開けたら溺愛でした

 両親への挨拶を済ませ、予定通り引っ越しをする。
 私のアパートを先に片付け、今日は大友のアパート。

 私のアパートよりも、ずっと、ずっと思い入れがあるこのアパートの、がらんどうになった部屋を見つめ、感慨深い気持ちになる。

「思い出がいっぱいで、名残惜しいね」

 私を抱き寄せた大友も「ああ、そうだな」と部屋を見つめている。

 いつも並んでビールを飲んでいたフローリング。
 大友が寝ると狭いベッドも体に似合わない小さなローテーブルも、今はもう何もない。

「あの辺りのフローリングで寝てるのを見た時は、ビックリしたなあ」

「新居のベッドは大きいのにしたから、蹴られても平気だな」

「もう! 私の寝相のせいじゃないでしょ!」

 こんな時も戯れ合って、笑い合う。

「さ、行こう」

「うん……」

「新居でもいっぱい思い出作ろうな」

 穏やかにそう言われ、手を差し出した大友の手に自分の手を重ねる。

「ずっと隣にいてくれる?」

「ああ、ずっと、な」


Fin.

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