同期は蓋を開けたら溺愛でした

 先に降りた大友が振り返って「降りないのか」と意地悪な視線を寄越した。

 誰のせいで、脚が竦んじゃったと思ってるのよ。

「10階くらいまで行ってくる」

「おい。サボるなよ。さっき出たアイディアを忘れないうちに固めるんだろ」

 手を差し出されギョッとして、大友の横をすり抜ける。

 もちろん、差し出された手に応えるなんてしない。

 追いかけてきた大友が頭をグリグリとかき回す。

「もー、髪がぐちゃぐちゃになる!」

「うるさいな」

 このくらいが戯れ合う同期の距離感。

 だから、いきなりその距離を侵害しないで欲しい。

 大友に気づかれないように、絡まされた指先の方の手でスカートを握る。
 震えそうな指先の熱が、どうにか無くなってくれるように。
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