同期は蓋を開けたら溺愛でした

 抵抗されず力なく外れた腕から解放され、私はつぶやくように言う。

「帰る、ね。飲み過ぎちゃダメだよ」

 その場から立ち上がる私の手に、大友は指を絡ませた。

 絡むというよりも頼りなく引っかかっている状態で、なんとも心許ない。
 その触れ方が余計に私の胸を締め付ける。

「……帰るなよ」

「帰るよ。明日、二日酔いだったら許さないから」

 私はできる限りいつも通りの調子で返答する。

「恵麻が帰ったら浴びるように飲むに決まってるだろ」

「だからダメだって」

「なら帰るなよ」

 埒のあかないやり取りにため息をつく。

「さすがに、ここにはいられないよ」

 しばしの沈黙の後、大友は観念したようにつぶやいた。

「……そう。分かった。悪かったな」

 かろうじて引っかかっていた指先は離され、それを寂しく思いながらもアパートを後にした。

< 68 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop