私の主治医はお兄ちゃん

美音side













気付けばとぼとぼと歩いていた。


嫌いになれたら…

そうしたら楽なのに。


しばらく公園のベンチに座っていた。







もう段々と日が暮れてきているのに夏休みに入っているこの時期は汗が垂れてくるほど暑い。






近くには母親と手をつないで仲良さそうに歩いている子供の姿。


美「ママ……」





”あんたなんか産まなきゃよかった!!!”
一瞬にしてフラッシュバックされた。



…ねぇ誰か教えて。私は生まれてこない方がよかったの?





おうちに帰りたい。



今日は確かママもパパもお出かけって言ってた気がする。


私は一度家に帰ることにした。

















美「ただいま。」


そう呟いてみてももちろん返事は返ってこない。







自分の部屋に入ってみるといつもと変わらない風景なのに今日は一段と暗く感じる。

楽しかった思い出。


私はそっとペン立てにあるカッターナイフを手に取った。




プルプルと震える手はまるでまだ生きたいことを訴えているようだった。




…これで切ったら楽になれるのかな?

……優也兄、湊斗兄、駿介にも迷惑かからなくなるのかな?

………私がいなくなれば。




美「……っ!」

するりと滑るように手首に傷を作る。



注射や点滴とは違うもっとひりひりとするような痛み。


違う。これは…切ったところが痛いんじゃないのかもしれない。






どんな時も側にいてくれたんだよ。お兄たちは。


熱を出したときは朝まで看病してくれた。

テストで100点取った時は一緒に喜んでくれた。

友達と喧嘩したときは一緒に悩んでくれた。


今まであったことが走馬灯のように蘇ってくる。




< 113 / 296 >

この作品をシェア

pagetop