交わることはない

病室に戻ると鈴は眠っていた。

疲れたのだろうと
ベッドの横に椅子を持ってきて
座った。
女性は、本当にすごいんだなぁ
と、考えながら鈴の寝顔を見ていると
鈴が目を開けて
俺を見て微笑んだ。
「鈴、本当にありがとう。」
と、俺が言うと
首を横にふって手を俺に出すから
俺は、鈴の手を両手で握りしめて
鈴の手に口付けをした。

鈴は、少しびっくりしていたが
「鈴、結婚してほしい。
鈴と結と三人で温かい家庭を
作りたい。あっ、結の兄弟もほしいけど」
と、言うと
鈴は、ポロポロと涙を流した。

俺は、その涙を唇と指で拭き取り
ながら、愛してる。とささやいた。

鈴は、一度大きく目を開いて
再び涙を流した。

もう、指や唇では間に合わないので
タオルでそっと拭いてから
ポケットにしまっていた
指輪を鈴の左手薬指に嵌めた。

鈴は、俺の動作を見ながら
泣いていた。
俺は、鈴の唇にキスをして
「籍入れても良い?」
と、聞くと
鈴は、うんうんと頷いてくれたから
「良かった、ありがとう。」
と、言う俺に
「出産が終わったから
大夢から離れないと行けないと
思っていたの。」
と、悲しそうな顔で言い
「そうだろうと思っていたよ。」
「ありがとう、私を選んでくれて。」
「結がむすんでくれたんだな。
二人で幸せになろうな。」
と、言う俺に鈴はうん、と
言いながら涙が止まらなかった。

出産と泣きすぎで疲れてしまい
鈴は、意識がなくなるように
眠ってしまった。

その間に俺は
鈴のお母さんと母さんに
「結婚して二人で幸せになります。」
と、伝えた。
母達から父親には伝わるはずだ。

翌日には、籍を入れて
結の出生届を出した。

両親の父親達が保証人となった。
どちらも初孫だから
大騒ぎだった。

夕方には、亮も来てくれた。
結が可愛いと騒ぎながら帰っていった。

夜になると
< コンコン >
< どうぞ >
入ってきたのは
遥と七湊で
「兄さん、お義姉さん
ご結婚と出産、おめでとうございます。」
「大夢さん、鈴さん、
おめでとうございます。」
と、二人に言われた。

俺は、鈴に
弟の遥と遥の婚約者の七湊だと
紹介した。
鈴は、
「ありがとうございます。」
と、二人に伝えて
「大夢?七湊さんて。」
と、言うから
「うん、そうだよ。
大事にしなくて俺がふられた子だよ。
でも、遥に溺愛されてるから
心配ないよ。」
と、鈴の手を握った。

そんな二人を見て
遥も七湊も嬉しかった。

鈴は、七湊に
「抱いて下さい。」
と、言った。

七湊は、遥を見上げると
遥が頷くのをみて
鈴からそっと結ちゃんを
抱かせてもらった
「小さくて、可愛いくて
良い匂い
ほらっ、遥、手、こんなに小さいよ
可愛いね、本当に可愛い」
と、瞳をキラキラさせながら
一人ではしゃぐ七湊を赤ちゃんごと
遥は、そっと抱き締めて
七湊の頭に口付けをした。
「遥も抱かせてもらう?」
と、言う七湊に
「大丈夫かな?」
と、言いながら赤ちゃんを
抱いて、遥は嬉しそうにしていた。

そんな二人を見て
大夢は、七湊と普通に話せる
ようになって良かったと
思っていた。

鈴は、この綺麗で可愛い子が
大夢と付き合っていた子なんだ。
それにしても大夢の弟さんも
すごいイケメンだけど
七湊ちゃんが好きでたまらないみたいだ
と、可笑しかった。

遥と七湊は、
「また来ますね。」
と、言って帰っていった。


「大夢、七湊ちゃんって
すっごく綺麗で可愛い女性なんだね?」
「う~ん?そうかもね。」
「えっ、微妙な反応はなに?」
「当時は、そう思っていたかも
知れないけど、いまは遥の婚約者しか
思ってないし
俺は、鈴と結がいれば
それだけでいいんだ
なっ、結?」
と、結を抱きながら
鈴にチュッとしていた。
鈴は、真っ赤になって騒いでいたが
大夢は、そんな鈴をみて笑っていた。

そんな鈴と結も無事に退院して
お家に帰ってきた。

大夢の父・善が
3LDKのマンションを二人に提供した。
王林組の持ち物だ。
鈴は、広いマンションに
びっくりしていたが
すごく喜んでいた。

鈴は、結が落ち着くまでは
専業主婦でいるが
落ち着いたら、鈴の思うように
すれば良いと大夢は言ってくれていた。

まぁ、二人目ができるかも
だけど・・・・

大夢と鈴は、仲間内で
結婚パーティーを開いて
結婚の報告と結の報告をした。

みんなから
驚かれたりしたが
みんな祝福してくれて
二人は、ゆっくり進んでいこうと
話していた。
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