その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
だけど、見る限り、うちの部署の社員全員の出欠確認は既に終わっているのだ。
もちろん、私を除いて。
「どうするって、どういう意味?」
困惑しながら渡された紙を広沢くんのほうに返すと、彼がきょとんとした顔で目を瞬かせた。
「どういう意味、って。そのままの意味です。碓氷さんも参加できますか?」
「え?」
意味がわからず聞き返すと、広沢くんが今度はその紙をデスクに置いてきた。
「今回、俺と秦野が幹事なんで。部署全員の出欠確認したくって」
広沢くんがそう言いながら、私のデスクのペン立てからボールペンを一本引き抜く。
「全員って……こういう歓送迎会って、いつも若手だけでやってるじゃない。役職者は対象外でしょ?」
入社して2、3年くらいはこういう歓送迎会の誘いを受けていたけれど、気付けば誘われなくなった。
そもそも行く気もないから構わないのだけど。