極上御曹司のヘタレな盲愛
「帰りに高橋と約束をしているのか?」

二人きりになると私の手首を掴んだまま、大河は普段よりも低い声で訊いた。

「う…うん。晩御飯を一緒に食べる約束をしてて…」

「…却下…!」

「えっ?なんで?私が誰と晩御飯を食べようが、大河に関係ないでしょ!」

そうよ!大河は花蓮の事だけを気にして…考えていればいいんだから!

「俺はお前の婚約者だ!関係ないだなんて言うな!」

「婚約って!そんなの大河とお父さんとお母さんが勝手に言ってるだけじゃない!私は認めてない!」

暫し睨み合うが…大河が大きな溜息を吐いて言った。

「とにかく婚約者がいるのに他の男と2人で飯なんか食いに行くな…」

「大河…一つ訊きたいんだけど…もしも3ヶ月間に、私に凄く好きな人ができても、私は大河と3ヶ月経ったら結婚しなくちゃいけないの?」

大河が…花蓮の近くに居るためだけに…。

大河はなんだか苦しそうな顔をし、小さな声で私に訊いた。

「高橋の事が…好きなのか?」

「……」

「どうなんだ⁉︎」

このまま…高橋君の事が好きだって…嘘でも言ってしまおうか…。
だから大河とは結婚できないって…。

そうしたら結婚しないですむの?

でも…やっぱり嘘はつけない…。

「昨日…高橋君に好きだって言われたの…。結婚を前提に付き合ってくださいって」

大河が一瞬、端正な顔を歪めた。

「私…男の人に好きだって初めてちゃんと言われたの…。言ったでしょ、初恋もまだだって。
花蓮じゃなくて、私を好きだって言ってくれる人は初めてで…。私、凄く嬉しかった…。本当の本当に嬉しかったの…。
昨日突然言われたからビックリしちゃって、今はまだ彼の事を男の人として好きではないと思う。
でも…私なんかの事を本気で好きだって言ってくれる人に、私もちゃんと向き合いたいの。
今日、彼とは晩御飯を一緒に食べて、その時に付き合うかどうか返事をする約束をしてる。
私は今の気持ちを正直に言うつもりよ。その上で『じゃ、付き合ってみようか』ってなって、一緒に過ごす事が多くなったら、彼を男の人として好きになるかもしれな…‼︎⁉︎」

私の言葉は大河の荒々しいキスに飲み込まれた…。

唇に軽く触れるだけのキスは何度かされたけど、それとは全然違う!

こんなの!形だけの…『とりあえず』の婚約者同士がするようなキスじゃない!

逃れようとする私の頭の後ろを、手首を掴んだのとは逆の手でしっかりと押さえられていて、逃れる事が出来ない。

「んッ!」

息を吸う事さえ許されず、頭がクラクラする。

掴まれていない方の手で大河の胸を力一杯押してみるも、ビクともしない。
逆に、手首を掴んでいた手を腰に回されグッと引き寄せられる。

「んーーッんッ!」

酸素を求めて無意識に開いた唇から…大河の舌が容赦なく侵入してきて口内を探られ、体がビクンと反応してしまう。

胸を押すのを諦めて、こぶしを握って大河の胸を叩くが、距離が近すぎて腕に力が入らない。

逃げようとする私の舌は…あっさりと大河の舌に絡めとられた…。

< 69 / 179 >

この作品をシェア

pagetop